EP1: Every | Agent-Native Architecture
15人で年商数百万ドル。コードを書かないエンジニア。メディアのふりをしたベンチャービルダー。
Every.toは「AIネイティブ企業」の最前線で何をやっているのか、裸で分析する。
構成(30-45分想定)
OPENING(2-3分)
AI Naked初回の挨拶・番組説明
- AI Nakedとは何か:一発撮り、ノーカット、使ったことだけ語る
- なぜEP1がEveryなのか
- AIを「語る」だけでなく「経営に組み込んでいる」最先端の実例
- メディア×ソフトウェア×コンサルの三位一体モデル
- (FlowStudioにとっての)ベンチマーク
PART 1: Everyとは何者か(8-10分)
1-1. Dan Shipperという人間
- ペンシルベニア大学・哲学科出身
- 在学中にFirefly(画面共有ツール)を創業。2人で6,000顧客、11ヶ月で6桁ドル収益
- 23歳で大学卒業とPegasystemsへの売却を同月に達成
- 「書くこと自体が思考」という信念 ← 哲学科+文筆家Annie Dillardの影響
- ロールモデル: Sam Harris、Bill Simmons、Kevin Espiritu(書き手×起業家の先人たち)
1-2. Every創業ストーリー
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2019 | Shipper「Superorganizers」連載開始(生産性ツールのインタビュー) |
| 2020 | Nathan Baschezと「Everything」創業。$600k調達 |
| 2021 | ニュースレターバンドルとして成長。有料2,400人、年額$200 |
| 2023 | 試練の年。Xアルゴリズム変更で流入減、Nathan独立(Lex事業化)、月次収益が一時減少 |
| 2024 | AI特化へのピボットが実り収益再加速。ARR 7桁到達 |
| 2025 | 前年比3x成長。ARR $120万。Reid Hoffmanらから$2M調達(sip seed形式、実行$500k) |
話すポイント: ブレークイーブン運営のおかげで2023年の危機を乗り越えた。固定費が低いから死なない。
PART 2: ビジネスモデル — メディアのふりをした三角形(8-10分)
2-1. 収益の3本柱
ニュースレター(MRR)
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AIプロダクト群 ——— コンサルティング
- ニュースレター + サブスク(MRR $60k = ARR $720k相当、有料約4,000人)
- AIプロダクト群(Spiral / Monologue / Sparkle / Cora)
- コンサルティング(年$100-200万)
同一オーディエンスを3方向にマネタイズしている。
2-2. プロダクト群の概要
| プロダクト | 何をするか | 類似サービス |
|---|---|---|
| Spiral | AIライティングパートナー。思考→草稿→推敲をAIと共同作業 | Notion AI, Jasper |
| Monologue | 音声→テキスト。話して書く体験 | Otter.ai, Whisper |
| Sparkle | Mac向けAIファイル整理。意味を理解して自動分類 | Hazel, Gemini 2 |
| Cora | AIメール秘書。自然言語で指示→自律的に処理。$15/月 | SaneBox, Superhuman |
- 4つをサブスクバンドルとして提供 = 「AIと仕事するためのインフラ一式」
- 「自分たちが最初のユーザー」戦略(Dogfooding)
- 各プロダクトは基本的に1人で運営
2-3. Writerの集め方 — 雇用ではなくパートナー
- バッチ採用(募集→初回ドラフト提出→選抜)
- 利益の50%を永続的に配分
- 自分のメーリングリストを持ち出し可(ロックインしない)
- 前払いあり
- Li Jinも寄稿者として参加
話すポイント: 「雇用」じゃなく「条件で勝つ」。ソロプレナーが人を集めるときの設計思想として学びが大きい。
PART 3: Agent-Native Architecture(8-10分)★メイントピック
3-1. 概念: コードの終焉
従来のソフトウェア:
- 人間がコード(手順の集合)を書く
- 機能追加 = コード追加
- 変更 = 既存コードの修正
Agent-Nativeなソフトウェア:
- AIエージェントがアプリの中核
- 機能 = 「ゴールを記述したプロンプト」
- エージェントが手段(How)を自律的に決定
- 変更 = プロンプトとツールの更新(コード不要)
Shipperの比喩:「ビルの建設ではなく、庭を育てるようなもの」
設計図通りに建てる高層ビル vs 種を植え、剪定しながら育てる庭
3-2. 5つの設計原則(Dan Shipperの記事 + FleetingNote整理より)
| 原則 | 意味 | テスト方法 |
|---|---|---|
| Parity(対等性) | UIでできることはエージェントもツール経由で達成できるべき | 任意のUIアクションを選ぶ。エージェントは同じ結果を達成できるか? |
| Granularity(粒度) | ツール=原子的プリミティブ、機能=プロンプトで記述された結果 | 動作変更にプロンプト編集で対応できるか?コードのリファクタが必要か? |
| Composability(構成可能性) | 原子ツール+Parityがあれば新プロンプトだけで新機能が生まれる | 「週次レビュー」=list_files+read_file+判断力。新コード不要 |
| Emergent Capability(創発) | 明示的に設計していないことをエージェントが達成できる | 「会議メモとタスクを相互参照し、約束したが未スケジュールのものを教えて」→コミットメントトラッカーを作っていなくても動く |
| Improvement over Time(時間的改善) | コードを出荷せずにアプリが改善される | 蓄積コンテキスト/開発者レベルのプロンプト更新/ユーザーレベルのカスタマイズ |
究極のテスト: ドメイン内だが特定の機能として作っていない結果を記述する。エージェントがループで動作してそれを達成できるか?
Yes → Agent-Nativeなものを作った。No → アーキテクチャが制約されすぎている。
3-3. Coraでの実践例(ライブストリームより)
- Coraの基本機能: メールを要約し、即時対応不要なものをブリーフとして1日2回配信。重要なものだけがInboxに残る
- ユーザー:「受信箱を片付けて」と自然言語で指示
- 内部のAIエージェントがメール解析→要約→分類→返信ドラフト生成を自律判断
- 開発チームの機能追加 = コードではなくプロンプト設計
3-4. Agent-Native化の実践: CLIを作る(Kieranライブストリーム 2026-01-08)
KieranがCoraをAgent-Native化するライブコーディングで示した具体手順:
-
Parityの第一歩 = CLIを作る
- 「ユーザーがUIでできること全てを、エージェントもできるようにする」の最短経路
- CLIならエージェントはそのまま使える(MCP不要、トークンのオーバーヘッドなし)
- GitHubもこの戦略(gh CLI)
-
Terminal Wire(Railsライブラリ)の採用
- CLIの定義とアクションをRailsアプリ内で記述 → WebSocket経由でストリーム
- サーバーを更新すればCLI側も即座に反映(CLIのアップデート不要)
- Brad Martinが単独開発したOSS
-
primeコマンドの設計
kora prime= エージェント向けの詳細説明コマンド- エージェントが最初にこれを実行すれば、CLIの全コマンドと使い方を把握できる
- 「helpのエージェント版」
-
創発的機能の実例
- CLIでTo-Do機能を公開したら、想定外の使い方が生まれる可能性
- 例: To-Doの上にリーディングリスト体験を構築するユーザー
- 例: WhatsAppのメッセージをCoraに流し込むユーザー
- 「ビルディングブロックを渡してユーザーを信頼する」
-
1.5時間でMVP完成
- 認証 + To-Do CRUD + テスト + PR作成まで1セッションで完了
- Agent-Nativeなソフトは、エージェント自身がCLIをテストできるため開発も速い
3-5. なぜこれが重要か
- 可塑性(malleability)が極めて高い
- ユーザーすらインターフェース上の指示を変えるだけで挙動を変えられる
- 要件変更への即応性が桁違い
- CLIという「古い」インターフェースが、エージェント時代に再評価される
話すポイント: 「コードを書く」という行為自体が過渡期の産物になりうる。CLIをAgent-Nativeの入口にするのは今すぐ真似できるプラクティス。
PART 4: Compound Engineering(5-8分)
4-1. 概念: AIが学習し続ける開発ループ
Plan(計画)→ Work(実装)→ Review(評価)→ Compound(蓄積)
↓
知見を記録 → 次のPlanで参照
↓
複利的に開発効率が向上
- Plan: エージェントがリサーチ・仕様確認・方針立案
- Work: エージェントがコード実装(人間はオーケストレーター)
- Review: エージェントが自己レビュー・改善提案
- Compound: 知見を構造化してドキュメントに自動追記 ← ★これが肝
「今日直したバグの教訓が、明日の開発では最初から活かされる」
4-2. Everyでの実践(Kieran Klaassen)
- シニアエンジニアKieranがClaude Codeで確立
- 社内で「compound-engineering plugin」を独自開発(OSSとして公開中)
- 具体的な開発フロー:
- Kieranが音声(Monologue使用)で機能の概要をClaudeに伝達
- Claudeがウェブ検索・コードベース解析でリサーチ→GitHub Issueに実装プランを自動生成
- 複数エージェントを並行稼働(フロントエンド / バックエンド / テスト / ドキュメント)
- 人間は「指揮者」として設計判断を下すのみ
- Claudeが自己レビュー→知見をドキュメントに追記
- 結果: 2人のエンジニアで通常15人分の機能開発を数時間で完了
Shipper:「もはやエンジニアはコードを書かず、AIエージェントのチームを指揮している」
4-3. ライブストリームで見えた実際の作業風景(2026-01-08)
Kieranの開発セッションから見えたCompound Engineeringのリアル:
-
Plan:
workflows planコマンドで3つのリサーチエージェントが並行稼働- 各エージェントが4-7万トークンを消費するが、メインのコンテキストには要約だけが返る
- 計画完了後にSpec Flow Analyzer(俯瞰チェック用エージェント)が自動実行
- 計画をTyporaで開いて人間がレビュー → 修正指示 → 再生成
-
Work:
workflows workコマンドで計画をPR化- 計画を渡すとブランチ作成→実装→テスト→PR作成まで自動
- 計画の入力はGitHub Issue、Linear ticket、自作のplan.mdなんでもOK
- 実装中にKieranは次の計画を並行して進める(マルチスレッド開発)
-
Review: 6つの専門レビューエージェントが並列でコードを検証
- Code Simplicity Reviewer / DHH Rails Reviewer / Pattern Recognition / Agent-Native Reviewer / Performance / Security
- 発見事項をTo-Doとしてファイルに保存 →
triageコマンドで人間が判断 - 「テックリードがエンジニアとレビュアーの間に入って判断する」体験
-
Compound:
workflows compoundコマンドで学習を蓄積- 例: 「Terminal Wireで常にcurrent_accountでスコープすべき」→ CLAUDE.mdに記録
- 次回のReviewでこの知見が自動適用される
- スキル・エージェント定義・ドキュメントを自動更新
Kieranの作業哲学:
- 25分ポモドーロで2時間ブロック
- AIが動いている間は「水を飲む、ストレッチ、X確認、ピアノ練習」
- 「あなたが関与する回数が最小限になるのが理想」
- コンパクション(コンテキスト圧縮)は気にしない。サブエージェントを増やしてコンテキストを短く保つ方が賢い
話すポイント: 「複利」という言葉がそのまま当てはまる。使えば使うほど賢くなる開発環境を自分たちで構築している。ライブストリームで実際にやってるのが説得力。
PART 5: コンサルティング事業 — 思想の外販(3-5分)
Agent-NativeとCompound Engineeringを他社にも展開
提供内容:
- 部門別AIトレーニング
- カスタムプラグイン開発(独自データ接続)
- Claude Codeを使ったE2E自動化の教育
- ワークフロー全体を走らせるエージェントの配備
実績:
| クライアント | 成果 |
|---|---|
| ヘッジファンド | 投資レポート作成: 1週間→数分 |
| PE | 投資メモ作成: 2週間→数時間 |
| 大手メディア | ブランドボイスをClaude Skillに組み込み |
話すポイント: 自分たちで実践した手法をそのままコンサルとして売っている。Skin in the Gameの典型。
PART 6: 我々の学び・クロージング(5分)
6-1. Everyから盗めること
- 三角形モデル: コンテンツ→プロダクト→コンサルの段階的展開
- ブレークイーブン経営: 固定費を下げて生き残り力を確保
- 条件設計でタレントを集める: 雇用ではなくパートナーシップ
- Compound思想: 使えば使うほど組織が賢くなる仕組み
6-2. 日本でEveryモデルは成立するか
- (フリートーク)
6-3. 次回予告
Appendix: ファクトチェック用データ
検証済み数値
| 項目 | 数値 | 時期 | ソース |
|---|---|---|---|
| 有料会員 | 2,400人 | 2021-07 | Every公式 |
| 年額 | $200 | 2021-07 | Every公式 |
| 有料会員 | 約4,000人 | 2024-09 | Every公式 |
| MRR | $60,000 | 2024-09 | Every公式 |
| 累計売上 | $3M超 | 2024-09 | Every公式 |
| フルタイム | 7人 | 2024-09 | Every公式 |
| ARR全体 | ~$1.3M | 2025頃 | Mixergy(Dan発言) |
| 従業員 | 15人 | 2025 | Lenny's Podcast |
| 調達(2020) | $600k | 2020 | Mixergy |
| 調達(2025) | $2Mコミット枠 / 実行$500k | 2025 | Mixergy |
未検証(収録時に言及する場合は注意)
- 創業初期(2020年頃)の正確なARR
- 従業員あたり利益のYoY推移(利益ベースの内訳は非公開)
- コンサルクライアントの完全リスト
References
Primary
Every記事・動画
- Agent-native Architectures: How to Build Apps After Code Ends - Dan Shipper & Claude共著
- Every LIVE: Building Agent-Native Software in Real Time - Kieranライブコーディング(2026-01-08)★台本の実践例の主要ソース
- Compound Engineering(2025-12-11)
- Introducing Every Consulting
- The Next Chapter of Every Consulting(2026-02-03)
外部
- Mixergy - Dan Shipper インタビュー
- Business Insider - Firefly買収報道
- Indie Hackers - Every収益モデル解説